ECサイトは作っただけでは売上は上がりません。
ECサイト運用では、商品の受注から梱包・出荷、アフターサービスといった一連の作業とは別に、マーケティング観点でECサイト上の売上UPのための施策を計画し、実行していかなければならないためです。
つまり、全てはECサイト担当者の施策・運用次第で売上に大きく左右します。
今回はECサイト運用をこれからやる方向けに、役割・業務内容、明確な売上目標と実行ついて解説をさせていただきます。
まずはEC事業を成立させるために必要な基本的な業務を習得・効率化し、売上拡大に向けた施策を実行できるよう中期的な目標を立てていきましょう。
またこれからECサイトを作りたいという方、手軽に始めたいという方はBASEなどを登録・運用をしながらこの記事をご確認いただけると幸いです。
目次
基本的なECサイト運用の業務内容について
まずECサイト運用の大枠としては、通常ECサイトで継続的に売上が発生するために、新規ユーザー含めた集客を考えたり、来訪してくれたユーザーから見えるページコンテンツの制作・整備、スムーズな購買体験を提供するために受注からお届けまでの流れを丁寧かつスピーディーに行ったりする業務を指します。
ECサイト運用の業務内容は多岐にわたるため、1つずつの業務を分けて覚えると、それぞれの業務の関連性が見えづらいため、「フロント業務」と「バックヤード業務」に分類して知っておくことが重要です。「フロント業務」と「バックヤード業務」について、解説させていただきます。
フロント業務について
EC運用のフロント業務は、ECサイトのサイトに掲載する写真や文章などのコンテンツ制作、売上を伸ばすためのプロモーション(広告管理、口コミ管理)などが主な役割になります。
またEC運用における集客・マーケティング業務は幅広く、Google・Yahooや各ECプラットフォームの検索エンジン対策、広告、アフィリエイト、SNSやコンテンツマーケティングなども含まれます。
それらのマーケティング施策に伴うサイトの導線設計、訴求力のあるページに作り変える「サイト改善」もフロント業務担当者の仕事になります。
これらの施策では、多様化したニーズやトレンドをしっかりと分析・把握する必要があり、効率良く見込み客へとアプローチする必要があります。
しかし、EC業界はトレンドの移り変わりが激しく、新しいマーケティング手法が次々とアップデートされる業界であるため、全ての業務を回すことは難しいといえます。
そこで近年は、少ない人材リソースでEC運用を行う事業者に対して、様々なお助けツールとして
MAツールやCRMツールはもちろんのこと、ECサイト構築から商品発送までの全て工程をサポートする「ECカートシステム」が登場して需要性が上がっています。
また他にも、ECサイトのマーケティング施策に関するサービスは様々であるため、必要に応じて外部パートナーと連携を取り、業務効率化を図ることを選択肢として考えておくと良いでしょう。
以下にEC運用のフロント業務担当者に関する内容を記載した記事を掲載していますので、是非ご一読ください。
バックヤード業務について
EC運用のバックヤード業務は、顧客には見えない業務を行うことであり、ECサイトの商品管理・登録作業、商品の仕入れの在庫管理や梱包・出荷などを行います。この中には商品の受発注から返品、キャンセル、顧客の質問・クレーム対応、ギフトによるラッピング対応などもバックヤード業務担当者の役割に含まれています。
※場合によっては、EC運用担当者の人数が少なケースがあるので、「商品の仕入れ」と「商品撮影」をフロント業務担当者が担うこともあります。
ECサイト運用における管理業務は幅広く、自社サイトの商品の登録作業だけでなく、楽天市場やAmazonなど、各ECプラットフォームごとに決められたルールに沿って登録を行う必要があるため、出品するECプラットフォーム・媒体の数が増えれば増えるほど、登録作業に時間がかかってしまいます。
管理工数も考慮すると、バックヤード業務担当者の作業も多岐にわたります。
このように、バックヤード業務は売上に直結しない作業がありますが、顧客満足度に大きく関わる業務であるため、当たり前に遂行できる体制を築く必要があります。
フロント・バックヤード業務範囲の広さ
上記それぞれの業務もECサイト運用において欠かせない作業であり、どちらか一方を怠ると、ECサイト上での売上が「上がらない」または「減少してしまう」といった事態に陥ってしまうため非常に重要な業務内容になります。
また、ECサイト運用は通常複数人で実施されることが多く、フロント業務担当者とバックヤード業務担当者、そして全体の進捗や連携を管理するディレクターなどの役割が必要とされますが、ベンチャー企業などの場合は、それぞれの業務に対して1人のEC運用担当者がほぼ全ての業務を担当しているケースも少なくありません。
もし1人で自社ECの運用を任された場合は、EC事業を成立させるための最低限の作業から優先順位を考えていく必要があります。
考え方として、まずは商品の受注から出荷までのバックヤード業務を万全にして、余裕ができ次第、新たなコンテンツ制作や、マーケティング・プロモーションなどのフロント業務を実行してい久野が優先度としていいと言えます。
しかし、最低限の業務から優先順位を付けて実行しても、一人に担える役割には限界があります。
加えて昨今のEC業界は、市場拡大と顧客獲得の競争が激化しており、EC運用を人間ひとりの力で担当するのは現実的とはいえません。
社内の人材が不足しており、EC運用を1名で実行する必要がある場合は、マーケティング業務を自動化する「MAツール」や、メール配信などで顧客と良好な関係を構築する「CRMツール」の導入を検討するなどして有効的に業務を回していきましょう。
ECサイト運用の売上目標と実行
上記のフロント業務・バックヤード業務が問題なく進行できる体制を整えつつ、「ECサイトの現状を分析し、売上目標を立て、売上UPのための施策を実行する」に取りかかる必要があります。
既にECサイトが存在している前提で、取り掛かるべき内容について解説していきます。
売上目標を立てること
EC運用担当者は、はじめにECサイトの「日々の売上」「アクセス数」「購入率」「購入平均単価(顧客1人が購入する平均額)」を把握し、売上の目標設定を立て、目標達成に導くための道筋を計画する必要があります。
目標とする売上に対して、年間予算は限られているため、ECサイトのアクセス数や購入率を注意深く比較し、計画的に目標設定を行う必要があります。
この目標設定が漠然とした数値になってしまうと、目標達成に向けての筋道が見えなくなってしまうため、ECサイトの実績を前年同月比や四半期毎に比較するなど、しっかりと現状把握を行うことが重要です。
例えば各ECプラットフォームには、独自で開催されるセールイベントがあり、各ECプラットフォームで店舗を構えるEC事業者にとって、大きく売上UPが見込める期間となります。
ECサイトの前年同月比や四半期ごとの比較と合わせて、セールイベントなどを踏まえた売上目標を立てる必要があります。
売上の波を確認して、改善していく
EC運用担当者は「売上が落ちてきたら販促を行う」のではなく、常に売上状況を確認して良い時・悪い時の両方の原因を確認する必要があります。
ECサイトの売上は落ちたから予算を上げるではなく、原因を追求して販促費を増やすかなどを考えていくなど事業理解をしなければならないです。これは売上の調子が良い時も同様です。
原因を突き止めないまま販促費を増やしてしまうと、「販促費は増やしたのに、全く効果が出ない」といったことが起こりがちになります。
したがって、EC運用担当者には、売上が良い時・悪い時の原因をそれぞれ検証し、売上が良い時はその売上の維持に努め、売上が悪い時は売上の底上げ・売上UPに努めることが求められます。
具体的に、お得情報のセールイベント時に、「自社ECの売上が通常時とさほど変わらない」などといったケースがありますが、こうした場合は「セールイベントの準備とフォローが足りなかった」と仮説を立てることが考えられます。
「セールイベントの準備をどうするべきだったか」や「セールイベント後の対応として求められる施策はどういったものなのか」などを深掘りして整理することで、セールイベント時に、「商品タイトルの改善」や「商品説明欄の書き替え」、「各商品ページのバナー変更」など、改善させていくことができます。
はじめてEC運用担当を任された人にとっても、EC運用の業務理解することはもちろんですが、「仮説を立てて、そこに改善を加える余地があるのか」を調べて実行するということが一番スキルとして求められます。
自社ECの現状の理解だけでなく、「なぜ自社ECは現状に留まっているのか」といった疑問を持つ意識を持ちましょう。
「アクセス数」と「購入率」の数値を確認し、PDCAを回す
EC運用担当者は、ECサイトの「アクセス数」と「購入率」をしっかりと把握しましょう。
アクセス数は「ECサイトがどのくらい見られているのか」を判断し、購入率は「ECサイトに訪れたユーザーのうち、どのくらいの確率で購入に至るのか」を判断する指標になります。
これらの数値に加えて、どのような販促活動を行うべきだったかを併せて振り返ることで、何が良くて何が駄目なのかを把握することができます。
例として「この集客は成功したがセッションが短かった」など把握することが出来るため、EC運用担当者は同じ販促方法をする中でも常に改善実行のPDCAを行う必要がります。
また、日々の集計を行う際にも気をつける必要があり、例えば月間売上を3000万円と設定した場合、単純に1日の目標売上を100万円にするのはナンセンスです。
ECサイトはリアル店舗と同じように売上の波があり、ECサイトの商品ごとにどの曜日に売れているのか・売れていないかをしっかりと把握し、商品の傾向から改善点まで出していく必要があります。
こうした売上の波を意識せずに売上目標を追うと、未達成の日が増えてしまい、正しくPDCA回すことが出来なくなってしまうので、過去の曜日別の売上傾向から売上比率を計算に入れて、日々の目標を設定していきましょう。
上記についてより具体的な内容については別記事にてまとめさせていただいてますので、是非そちらもご確認ください。
ECサイトを運用する上で3つの注意点
最後にECサイトを運用するうえで注意点3つを挙げさせていただきます。
マーケティング手法を間違えないこと
多くの場合、ECサイト運用は少ない人材リソースで施策を実行していくため、実行できるマーケティング施策には限りがあるものです。
そんな時に手っ取り早くアクセス数・売上UPを狙える「広告運用」にフォーカスされることが多いです。
リスティングなどの広告によってアクセス数が伸び、一定の売上は確保できるようになります。しかし運用型広告は市場の競合の数が増えたり、シーズンごとにユーザー行動の変動が激しくなったりするため、入札される広告枠で上位表示を獲得するための入札単価は日々上昇していき、広告費と売上のバランスが悪くなってしまう可能性があります。
多くのECサイトはこうした広告の入札競争に巻き込まれてしまうため、マーケティング手法を広告運用だけに頼るだけでなくオーガニックからの流入・売上を作ることも考えていきましょう。
上記については、ECサイトで継続的に売上を上げていくために、SEOで自然検索枠の上位表示獲得を狙う必要があります。
自然検索枠とは、ユーザーが検索した際に、広告枠(PR)の次に上位表示される商品ページのことで、各ECプラットフォームが「販売実績」や「口コミ・レビュー数」などを判断材料としてランキングを決めているものです。
つまり、販売実績を作るために広告出稿を活用しつつも、SEOでの上位表示獲得のために、施策を同時並行していく必要があります。
Amazonや楽天市場のようなECプラットフォームだけでなく、GoogleやYahoo検索におけるSEO対策も徐々に取り組む必要があります。
在庫管理の徹底
店舗を利用するユーザーにとって、商品の在庫確認は「出来ていて当たり前」と思われている部分になるため、EC運用担当者にとってはミスが許されないことです。
したがって、在庫管理の方法を「リソース」や「担当者のやる気」に依存しない仕組みで構築する必要があります。
EC運用を複数人で担当しているEC事業者は、EC運用担当者が1人の場合でも通常の業務フローが遂行できるような体制を整えることが重要です。
先ほどもお伝えさせていただいたMAツールやCRMツール、在庫管理システムなどを活用し、普段からオペレーションの最適化を図って誰が見ても対応できる状態にすることが重要です。仮にアクセス数が急増して在庫が追いつかないなどといったケースもありますが、そうした場合はマーケティング手法を見直す、または在庫を増やすなど常に数字を見ながらコントロールさせるようにしていきましょう。
特に近年は以下のようなネットショップ運営向けに会員管理、ショッピングカート機能などの標準機能にあわせて 最新の「定期購入システム」、売上アップのための「割引クーポン」システムなど 多数の機能が搭載しているので、お困りの方は一度確認してみてください。
また急遽人員が足りなくなっても迅速に対応できるよう、常に1名程リソースの余裕をもっておくことが大事です。
出荷ミスを無くすこと
在庫管理を徹底するのと同様に、出荷ミスを無くすことも絶対にあってはならないことです。
出荷ミスも在庫管理と同じく、なるべく社内リソースや担当者の経験に頼らない仕組みで解決しましょう。
例えば、適切な商品マスタを作成して管理することで、出荷時のミスを無くすことにつながります。
EC事業者によって様々な商品を扱うため、一般的に商品マスタは、そのEC事業者独自の商品IDを用いて在庫管理、出荷作業を行います。
また、Amazonで出店する場合は、バックヤード業務の効率化を図るために、FBA(フルフィルメント by Amazon)を活用すると良いでしょう。
Amazonの配送ネットワークを使うことで、商品受注から梱包・発送、返品やカスタマーサポートまでAmazonに代行してもらうことができます。
まとめ
ここまでEC運用担当者の業務内容と役割、売上目標の設定とECサイト運用の注意点について説明しました。
本記事で述べたように、EC運用担当者の業務範囲は幅広く、様々な業務を遂行するスキルが求められます。そのため、「何から手を付ければ良いのか分からない」といったケースに陥ることも多々あるでしょう。
その場合は、本記事の内容を確認いただきつつ業務内容を理解しつつ売上目標・実行内容について仮説持ってPDCAを回していきましょう。